大反響!
「天声人語」で紹介される
 
AARPの挑戦
 
日本労働者協同組合連合会 編
四六判上製 260p
定価2100円(税込み) 
発行 シーアンドシー出版

 
天声人語
 
米映画でよくこんな場面を見た。銀行に強盗が押し入る。窓口にいる中年の実直そうな係員に銃を突きつけ、こうすごむ。「定年後を楽しみたくないのか」。あちらでは退職者には天国が待ち受けているのかな、と想像たりした▼同じ関心を持つ日本労働者協同組合連合会(本部・東京)がこんど現地に出向き実情を調べてきた。高齢者問題に取り組むこの団体が見習おうとする運動が米国にある。50歳以上の三千万人が参加する全米退職者協会(AARP)。まずは調査の内容に耳を傾けよう▼協会の創始者は、カリフォルニア州の女性教員。退職後、急に不安を感じたのが健康だ。この国には公的な医療保険がない、退職教員のグループで健保をつ<ろう、と思い立った。全国を歩き、四十一番目のニュー∃ークの保険会社で、やっと前向きの反応があったった。五千人が加わる団体保険が一九五五年に誕生する。これが運動の源流▼続いてこれも切実な医薬品に取り組む。特許切れの薬に目をつけ、通信販売で会員に安く分けた。協会はすでに非営利組織(NPO)に認定され郵便料金の特典があった。次第に会員が増える。ホテル、レストランのメンバース制度結成にも手を伸ばした。高齢者は旅と食事が好き、しかも会員数は多い。とくればこ制度が繁盛しないわけがない▼数は力となり、それは政治に向かう。各種の選挙では候補者にインタビューし、部数二千二百万の機関紙に載せる。公約の実行ぶりも点検する。これらの作業のため四十万人ものボランティアがいる。去年八月、五十歳になったクリントン大統領も入会した▼協会の発展の教訓は極めて明白かつ単純。起業の精神と勇気と、そして努力と知恵と。それなしにはどんな天国もやっては来ない。調査結果は『AARPの挑戦』(シーアンドシー出版)として今月中に刊行される。

 
1997年10月刊 書店発売元:星雲社

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